スキル管理を組織に導入する際の進め方
- 対象読者:
- 管理者・担当者向け
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- 人事・労務エッセンシャルタレントマネジメントHRストラテジー
SmartHRのスキル管理機能は、複数部署、複数担当者で運用することで、1人の担当者に負担を集中させることなく、組織的な運用が可能となっています。
この記事では、スキル管理を組織に導入する際の具体的な進め方について紹介します。スキル管理を組織で運用するでは、スキル管理のメリットや組織運用の全体像について説明しているので、あわせて参照してください。
1. 導入の範囲と目的を決める
スキル管理を組織に導入するにあたり、まずはなぜ従業員のスキル管理をするのか、目的とゴールという観点で整理します。スキル管理を導入する背景や、解決したい課題を明確にすることが重要です。
導入目的として考えうるのは、たとえば人材育成計画への活用、異動・配置の最適化、採用計画へのフィードバック、従業員のキャリア開発支援、スキルギャップの可視化と解消などです。自社の状況に応じて、最も重視する目的を明確にしてください。
目的を定めたら、具体的なゴール(達成目標)を定義します。たとえば「〇年以内に全従業員の主要スキルの登録を完了する」「〇年後には、人員配置時に従業員のスキルを参照できるようになっている」「〇か月後までに、業務に必須の資格を特定し、その保有状況を100%把握する」といった、測定可能なゴールを設定することで、プロジェクトの進捗を追跡しやすくなります。
導入の範囲を決める
目的が決まったら、当初どの範囲で導入するかを決定します。
- 小規模導入(部門単位):特定の部署や職種に限定して導入します。スモールスタートで始めやすく、成果を早期に実感しやすいメリットがあります。
- 大規模導入(全社展開):全社一斉に導入します。全社的な人材配置や分析が可能になりますが、調整コストは高くなります。
導入範囲を決めるにあたり、社内でスキル管理の必要性を感じている部署や人を把握する必要があります。 あなた以外にも、社内でスキル管理機能を利用したいと考えている人や、すでに資格や研修の管理を行なっている部署や担当者がいるはずです。 資格管理を行なう人事・総務部門や、研修を主管する人材開発部門といった管理部門が該当する可能性が高いでしょう。また、独自のスキル管理を実施している事業部門もあるかもしれません。 各担当者にヒアリングし、スキル管理機能の導入当初から参加してもらうのか、それとも当初は見送って別のタイミングで参加してもらうのか、ロードマップをつくりながら判断していくと良いでしょう。
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2. 推進チームを組成し、役割分担する
導入範囲が決まったら、その範囲に関わる関係者を巻き込み、推進チームを組成します。導入までの以降の作業は、このチームが協同で実施していきます。
現状の業務内容や要望を詳しくヒアリングし、スキル管理機能をどのように運用していくべきか、の解像度を高めていきます。 また、この時点でやっておくべきなのは、マスターデータの運用ルールやガイドラインの整備です。
マスターデータの運用ルールやガイドラインを整備する
スキル管理機能で従業員から資格・研修・スキルを収集するには、マスターデータが必要です。しかし複数部署・複数名の担当者がマスターデータを作成すると、データの重複や表記ブレなどの問題が起こりやすくなります。そのため、マスターデータの構造と、ルールやガイドラインをあわせて考えていく必要があります。
ここでは一例として「各自が触って良いマスターデータの範囲を決める」という方法を紹介します。たとえば、スキル管理機能ではマスターデータを階層化できるので、最上位の階層に「営業部門」、「開発部門」などのマスターデータを作成し、各部門はその下位階層のみ自由にマスターデータを作成して良い運用ルールとします。全社的な資格や研修を扱う管理部門は「全社共通」などとした階層の下を管理します。
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ただしこの方法では、「運転免許」という資格が「全社共通」の階層に置いてあるのに気づかず、「営業部門」の下にも重複して作成してしまう、ということがありえます。これを防ぐには、次のようなルールを徹底する必要があります。
- マスターデータ作成前に「全社共通」を確認する。
- マスターデータを作成する前にスキル管理の責任者に連絡する。
- マスターデータ追加は申請制にし、申請を受けて限られた数の担当者がマスターデータ作成操作をする。
とはいえ最初から完璧を目指すのは難しいでしょう。マスターデータの階層構造や設定項目の多くは、あとから編集が可能なので、マスターデータもガイドラインも少しずつ最適化していくのが賢明です。マスターデータをあとから編集する場合の注意事項についてはQ. スキル、資格、研修のマスターデータの編集、削除ができないを参照してください。
マスターデータをどのような運用ルールや構成にするか考えるには、実際にマスターデータを操作してみるのがおすすめです。操作方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
3. 導入準備と運用開始
導入の最後のステップとして、運用のための準備をしていきます。
担当者のアカウントを追加する
スキル管理機能に担当者のSmartHRアカウントを追加することで、スキル管理機能を利用できるようになります。
操作権限
スキル管理機能の操作権限には、以下の3種類の操作権限があります。役割に応じて適切な権限を付与してください。
機能管理者 最上位の権限です。あらゆる設定が操作できます。特に、アカウントの権限を自由に設定できるため、セキュリティ上、ごく限られた人にだけ付与するべきです。運用にあたっては社内の情報セキュリティポリシーも関係してくるので、総務や情報システム系の部門に確認してください。
業務担当者 マスターデータの追加・編集・削除、従業員の資格・研修・スキルの操作、申請の承認などができます。権限の管理と、一部の機能設定変更はできません。 マスターデータの追加や管理をする人に付与します。この操作権限を持っていると、マスターデータを自由に編集できてしまうので、できるだけ限られた人にだけ付与するべきです。
業務担当者(マスターデータ操作不可) 従業員の資格・研修・スキルの操作、申請の承認などができます。マスターデータ操作、権限の管理、一部の機能設定変更はできません。 従業員の資格・研修・スキルを収集する担当者、たとえば事業部門の現場部署の担当者などに付与します。
閲覧範囲の制限(ロール)
アカウントには、操作権限以外にも「ロール」を付与できます。 ロールを使うと、各部門の担当者が自部門の従業員の情報だけを閲覧・操作できるように設定でき、部門をまたいだ情報へのアクセスを制限できます。
たとえば、管理部門の担当者は「すべての従業員」を閲覧できるようにし、事業部門の担当者は「自部門の従業員のみ」閲覧できるようにする、といった設定が可能です。
マニュアルや窓口を共有する
導入後には、これまで導入プロジェクトに関わってこなかった部署の担当者や、一般の従業員もスキル管理機能を操作していくことになります。各人がスキル管理業務を円滑に進められるように、マニュアルを用意・共有しておきましょう。
SmartHRでは以下のようなヘルプページを用意しているため、社内共有し、スキル管理機能の目的や操作について理解してもらいましょう。
- スキル管理を業務担当者として使う
- スキル管理機能で従業員の資格・研修・スキルを収集する業務担当者(マスターデータ操作不可)向けの基本的な使い方をまとめたヘルプページです。
- スキル管理
- 従業員向けのヘルプページです。従業員が使い方がわからない場合、業務担当者からこのヘルプページを案内できます。
また、スキル管理機能について、社内の問い合わせ窓口を周知しておくと、フィードバックを収集しやすくなります。
運用を開始する
準備が整ったら、運用を開始します。 対象となる従業員や担当者に周知し、スキル情報の収集や管理をスタートさせます。
導入範囲が広く、いきなり本番運用を始めるのが不安な場合は、一部の部署でテスト運用を実施することをおすすめします。 数週間から数か月程度運用し、課題や改善点を洗い出してから、本番展開に進みましょう。
